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用途に合わせた方式選択:物流用バーコードリーダの選び方

物流搬送ラインの運用には欠かせない固定式バーコードリーダは、物流搬送ラインに使われ始めた当初は、選択肢としては唯一レーザ式しかありませんでした。その後、カメラ式が登場し、近年は撮像デバイスの性能向上に伴い、カメラ式の製品ラインナップも充実して物流搬送ラインへの採用も増えて来ています。


それぞれの方式には特長があり、用途に合わせて特長を活かした方式選択のご参考にして頂けるようにレーザ式から順に特長をご紹介します。

レーザ式バーコードリーダ


レーザ式バーコードリーダが物流搬送ラインに普及し始めたのは、もう40年近く前で、頑丈な筐体にヘリウムネオン(HeNe)ガスを封入したレーザチューブを積んだ非常に重量感があるものでした。


その後、30年程前には、レーザ光源は半導体レーザダイオードに置き換わり、固定式バーコードリーダのコンパクト化が進みました。更に半導体レーザダイオードは、変調技術の実装を生み、バーコードリーダからラベルまでの距離をリアルタイムで把握することができるようになりました。


距離を把握できたことにより、ポリゴンミラーがどの角度でレーザをスキャンしているかの要素を加えることで、バーコードリーダがラベルをどの位置で読み取ったかを知ることができるようになりました。
この事により、搬送物をトラッキングし、搬送物の位置、バーコードの貼付け位置により、読み取ったバーコードを正しく割り付けること(PackTrack™)が可能になりました。

更に焦点距離の異なる複数の半導体レーザダイオードを同一光学路上に配置し、測定距離に応じて対応する焦点距離のレーザに電気的に切り替えること(ASTRA™)により、1スキャン(1msec)内でラベルの位置に応じて焦点距離の切り替えを行うことを実現し、それまで不可能であった同一視野内での高深度読み取りを実現しました。

  • ASTRA™概要図

    ASTRA.jpg
  • PackTrack™概要図

    PackTrack2.jpg
  • PackTrack™構成例

    PackTrack.jpg

それ以前にもレーザ式バーコードリーダはトラッキング機能を有していましたが精度の低いものでした。距離の測定は外部センサを使い、物理的なフォーカスの切り替えも遅延時間が伴うため、一定距離の荷間隔が必要でした。
距離測定がもたらした高精度なトラッキング技術(PackTrack™)とレーザ切替フォーカス技術(ASTRA™)は、10cm程度に搬送間隔を狭めることを可能にし、物流施設の能力向上に貢献しました。


レーザ式は古くからある技術ですが、上記のように改良が施され、搬送速度への高い追従性を持ち、読み取り深度と走査幅から得られる広い読取りエリアは、ラベル品質が一定水準に保てる用途には高いコストパフォーマンスを発揮します。

リニアカメラ式バーコードリーダ


リニア式カメラは20年以上前に登場していて、まだ当時は高出力のLED照明がなく、定期的に部品交換が必要なナトリウム照明が使われていました。ナトリウムランプと言えば、2010年頃まで高速道路のトンネルで良く使われていたオレンジ色の照明が有名です。デコーダも当時は、ハードディスク搭載のデスクトップPCに画像処理用のフレームグラバーボードを積んだものでした。


その後、10年以上前には、耐久性にも優れた高出力のLED照明と一体化したデコーダ内蔵型の今日のリニアカメラ式バーコードリーダの形になりました。コンベアの加減速に対応した正確なトラッキング機能も搭載し、高能力仕分けに使われました。

リニアカメラ式の最大の特長は、8K(8,196pix)の高解像度の画像取得と走査速度(33KHz)の速さの両立です。更に外部センサを用い、読み取り対象物との距離を測定し、距離に応じて追従したフォーカス位置制御を行うことにより、高深度を実現しています。そのため、リニアカメラでスキャンする面は同一平面である必要があります。搬送物の形状で言えば、立方体や直方体が適しており、不定形品は読み取り面(スキャンライン上)の距離が異なることがあるため(焦点深度の関係でフォーカスずれが発生してしまう事があるので)不向きです。

  • AV7000スキャンライン

    AV7000mirror.jpg

レーザ式でも合成機能を備え、何回かのスキャン結果を合成することで、バーコードを全方向で読み取りすること可能ですが、バーコードにかすれが生じていると、ノーリードの発生に繋がり易い傾向にあります。カメラ式の場合、バーコード全体を画像で捉えますので、一部分のかすれではノーリードに繋がり難い特長があり、高いリード率を実現します。

エリアカメラ式バーコードリーダ


エリアカメラ式バーコードリーダは、20年以上前に2次元コードを読み取るために登場しました。約30万画素のVGA(640×480ピクセル)カメラを搭載したものでした。その読み取りエリアは狭く、物流で使用するような大きさのバーコードを読み取れるものではありませんでした。


その後の、グラフィックデータの高画質化に伴い、エリアカメラの画素の拡大が進み、それに対応するマイクロプロセッサの演算処理速度が上がり、現在では、エントリークラスのコードリーダでも1.2MP(1,290×960)が搭載され、撮像エリアも縦横方向ともVGAに比べ2倍の広さになり、汎用クラスでは、2MP(1,600×1,280)が搭載され、小型、中型のレーザ式バーコードリーダのアプリケーションに対応することができるようになっています。

コードリーダの多くが使われる製造分野での2次元コードを読み取る一般的アプリケーションは、限定された範囲に指定された極小スペースにコードを印刷して読み取るようなケースが多く、2MPクラスまでの仕様で十分でしたが、物流分野で使われる大型のレーザ式バーコードリーダのアプリケーションに対しては、仕様面で不足していました。

更なる撮像素子の高画素化により、現在では、5MP(2,448×2,048)、9MP(4,096×2,160)などの高画素のエリアカメラ搭載した物流専用のリーダが開発されています。横長サイズの9MP搭載モデルでは、リニアカメラの8K(8,192pix)と比較しても、1台で約半分の撮像エリアを確保することができ、リニアカメラと同様に外部センサを用いたフォーカス制御も可能で、トラッキング機能を装備し、リニアカメラ方式が使われていた分野の一部でも使用可能になっています。

  • 小型(WVGA~1.2MP)

    Matix120application.jpg
  • 汎用型(2MP)

    Matrix320aapplication.jpg
  • 大型(5MP~9MP)

    AV900applicaton.jpg

レーザ式との比較に於いては、エリアカメラ式と同様に読み取り対象のバーコードにかすれが生じた場合に於いても読み取りミスが発生し難く、画像データの保存も可能な点があります。


更にリニア式カメラとの比較に於いて、エリアカメラの特長としては、焦点位置に対して被写界深度が深い点が第一に挙げられます。物流用途では、不定形品の読み取りに適しています。

尚、読取りに必要なエリアカメラの画素数は、読取り範囲の大きさに比例し、読取り対象のバーコードのナローバーサイズに反比例します。ナローバーサイズが細いとより多くの画素数を必要とします。アプリケーションに合った画素数のエリアカメラの選択が重要となります。


レーザ式、リニアカメラ式、エリアカメラ式の特長をご紹介致しました。物流用バーコードリーダの方式選択のご参考となれば幸いです。
ご興味のある方、是非ご連絡お待ちしています。